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悪者と女の子。
花見酒。

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花見酒。 2008/05/30(Fri) 18:47
技術屋稼業覚帳<一世代前>
花見酒



酒盃の上。
やわらかに色づいた薄い花びらがひらりと舞い落ちた。

「こりゃ風流だねぇ」
「なにが風流だこの変態」

隣で同じく盃を傾けていたのはなじみの男。しとどに酔った風体で気軽に絡んでくるのは付き合いの長さゆえとはいえ。

――やや鬱陶しい。

「変態って誰が」
「お前だよ、お前。源氏の君でも気取るつもりか? なんだよあれ、目茶目茶可愛く育ってるじゃねぇか」

こいつ。目の縁を赤く染めているのは、酔っている以外に理由があるんじゃないだろうな。

「あれは普通の娘に育てるの。悪さしたらお前でもお仕置きだよ?」
「な、何もするつもりはねーよ」
「あ、そ。ならよかった」

朧月を映した酔い水を花びらごとのみ干す。
甘い中に青さのある香は、その昔、戯れに手元へ置くと決めた養い子のようだ。

「じゃあ、そろそろ手離すのか?」
「うん――どうしようね」
「どうしようってお前」

迷っているのは手離したくなくなっているからなのだとわかってる。
この気持ちに名前をつけてしまえば普通の娘に戻してやる事が出来なくなる事も。

――困ったね、どうも。