WebClapお礼小話

Shall we Dance?番外編

morning sun

※本編完了後。二人で過ごした夜が明け、ビズが目覚める前のクラ視点小話です。




小鳥たちの囀りと、薄いレースのカーテンから差し込む朝日。
僅かに開かれた窓からは、ほんのりと冷たく新鮮な空気が流れ込んできている。

その穏やかな日差しに照らし出される女性らしい暖かな調度で設えられた部屋の中。
据えられたベッドの上で先程目覚めたばかりのクラは、隣に眠るビズの寝顔を見下ろしていた。


昨夜の出来事が嘘のように満ち足りた様子で寝入っている最愛の少女は、未だ目覚める気配が無い。

クラがいとおしむようにビズの白い肌に指を滑らせる。
と、ビズは小さく声を漏らしながら身じろぎし寝返りを打ち、小さな背中がクラに向けられた。

さらさらと黒髪が絹の上を流れ、乱れた髪の間から白い項が覗く。
細く頼りなげな肩が規則正しい寝息に合わせて上下している。

クラは、まず何も纏ってはいないビズの肩に口付けを落とし、次いで首筋に顔を埋めた。


―――さて、ではこれからどうしましょうか。


うっそりとした笑みを浮かべ、放蕩息子と名高い策士は、ライを説き伏せ親族を黙らせるべく算段を練り始める。

誰が何と言おうとも、手に入れたばかりのこの少女を妾にするつもりなどクラにはまったく無い。
例えビズ自身がそれを望んだとしても、だ。

そもそも、そんな曖昧で危うい関係をクラが良しとするはずも無かった。

欲しいのは、彼女を公然と手中に収めておけるだけの関係。


眠るビスの髪に指を絡め、掬い上げる。

その艶めく黒髪に口付けを落とし、クラはビズの耳元で囁いた。


「もうシスに心奪われることは許しませんよ?貴方の心を占める男は―――私だけでいい。」


そっと起こさぬようにビズを抱き締め、目の眩むような幸福感に酔いながら。

ビズとの出会いを齎してくれたシスという泡沫の存在に感謝をしてもいいと―――このとき初めてクラは思った。



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