10.おわり |
クラの唇が名残惜しそうにビズから離れていく。 ビズは先程キスに酔っている姿をみられたことが恥ずかしくて、クラの唇が離れると共にクラの胸へと顔を埋めてしまった。 クラの長い指がビズの黒髪を弄んでいるのを感じる。 「次の舞踏会でお誘いしたら私と踊っていただけますか、お嬢さん?」 突然のクラの言葉に驚いてビズがクラを仰ぎ見た。 からかいを含んだクラの笑み。 ビズはクラの誘いを断った舞踏会でのことを揶揄されているのだと気づき、僅かに考え込んだ後、花開くような満面の笑みを浮かべた。 「あら。クラ様は、私をエスコートしてくださらないおつもりですか?」 クラが一度瞬き、ふっと笑んだ。 「これは失礼。そうですね、次回はぜひ私にエスコートさせてください。」 「よろこんで。」 ビズがくすくすと笑いながら答え再びクラの胸に顔を埋める。 そのビズの耳に飛び込んできたのは、なぜか心を揺さぶるようなやけに甘いクラの声だった。 「―――ビズ、貴方の全てを私が貰い受けても構わないでしょうか?」 「―――え?」 さらりと言われた内容の意味を掴みかね、ビズが顔を上げる。 そして眼にしたのは―――・・・。 ぞくりと背筋の震えるようなクラの笑みだった。 「クラ、様?」 何をクラに言われたのかわかっていないビズが、首を傾げる。 ビズのその様子にクラが苦笑いして、ビズに再び囁いた。 「貴方と共に寝台の中で一夜を過ごすことをお許し願えますか?」 「っ!?」 ようやく意味を理解したらしいビズの頬がぱっと朱色に染まる。 「え、クラ様・・・その・・・。」 ビズが困惑しながらふるふると首を横に振る。 だが、クラはビズの承諾を待たずにビズのその柔らかな唇に深く口付けてきていた。 ―――そして。 月光にうっすらと照らし出される二人の姿はぴたりと重なり。 その影は、忍び込んだ夜風に揺れる天蓋の布に包まれた寝台の中へとゆっくりと消えていったのだった。 〜Fin〜 |
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