14. 由紀の追及、七夜の選択


会場に私と志筑が戻ると。『パンプキン・ジャック』は波乱の内に幕切れとなったらしく。


な、なんだか。注目を、浴びてる。
うう、あたりまえかぁ。あれだけ派手に飛び出してけばね。


あ。由紀。
会場の真ん中辺りに、全身黒を纏った小悪魔仮装の由紀が、いた。

こちらに気づいたと見え、人ごみを避けながら駆け寄ってくる。


「七夜!」

がし、と。由紀が私の二の腕を掴んだ。


「もう。心配したんだから。・・・・志筑君に、何にもされなかった?」


後半部分は、私の隣にいる志筑をきっとばかりに睨みながら。

・・・・なるほど。確かに、気をつけてみれば。
由紀、志筑を警戒・・・と、いうか、威嚇してる??

今までは。まったくそんなこと考えてなかったからなぁ。
全然、気づかなかった。

志筑が余裕気に由紀の視線を受け止めてる。

その様子を見た由紀の眉間に皺、が。
あ。そんな怖い顔で、振り向かなくても。

「な・な・や?」

一字一句。しっかり、はっきり区切りながら。
由紀が私を見据えてくる。

眼、眼が据わってるって。
う、腕。腕、痛。

由紀に掴まれた腕がきりきり締め付けられる。

「ええっと。」

だらだらと冷や汗を流しつつ。口ごもる私を見て。
由紀は、すべてを了解したように、腕の拘束を解いてくれた。

流石、長い付き合いだけはある。


「ほんっとに!いいの!?この男で!?絶対、苦労するわっ」

びしっと、志筑を指差しながら。きっぱりと、言い切る。

こ、この男って・・・。
由紀、皆、見てるし。

さっきまでざわついていた会場内が、いつの間にか、しん、としている。
皆、コトの成り行きを見守っているようだ。
私たち三人の周りには、人の輪ができていた。


あー、志筑。あんたも当事者でしょうが。
なんでそんなにしれっとしてるかなぁ。


はあぁぁ。

由紀と志筑。二人に挟まれながら。あきらめの溜息をつく。


たぶん。志筑の援護は、期待できない。
これは。私に、はっきり肯定しろってことなんだろな。


「うん。・・・・たぶん、由紀の言うとおりだと、思う。苦労しそう。でも、私は・・・・志筑が、いい。」

私の言葉に、由紀が眼を見張った。


うう。ま、間が重い。
こ、こんな大勢の前で、何故に私はこんなことを言う羽目に陥ってるんだろう。

あ。既にもう、これって、苦労?私もう、苦労している??


「七夜ってば。まったく、どうしてそう。わざわざ自分から厄介ごとに。」

がっくりと頭を下げて、由紀がおもぉい溜息。

由紀の中じゃ、志筑=厄介ごと?な関係が出来上がっているらしい。

まぁ。否定できないところが、つらいとこだわ。


「・・・・しょうがない、か。もう。七夜が自分で決めたことだもの。一度決めたら、絶対、引いたりしないのが・・・・長所であり、短所よねぇ。」


た、短所ですか。
そんなしみじみ、噛みしめて言わなくてもって・・・・へ、な、なに?

由紀が。諦めの言葉を告げた途端。
私たちを囲んでいた人垣から一斉に声があがった。


「えーーー、認めちゃうのぉ?」
「マジか?」
「やだぁ、志筑クン!」
「黒河。志筑はやめとけってぇ!」
「なんだよぉ、やっぱ志筑とくっつくのか、黒河?」


ザワザワ。ガヤガヤ。
一気に喧騒に包まれた場内。

「七夜。ほら、行くぞ。」

傍観を決め込んでいた志筑に、手を引かれる。
どうやら、会場から逃げだすことに決めたらしい。

「あ。うん。・・・・由紀も行こ?」

志筑に引かれていないほうの手で由紀に向って手を伸ばす。

「私は、遠慮しとくわ。・・・馬に蹴られたくないから。」

苦笑を浮かべ、由紀がひらひらと手を振った。



会場の入り口へと、志筑が私を引っ張って行く。

皆、口々に好き勝手なことを言ってくれる中。
私と志筑は、何とか会場を抜け出し。


二人並んで、教室までの道のりを、進んだ。



−−−ほんと。人生って何がおこるかわかんないもんだわ。

私の右隣を歩く志筑を見上げつつ、しみじみ感慨に耽る。


これからの高校生活。
とんでもなく波乱万丈になりそうな予感。と、いうか確信かな、これは。



高校入学7ヶ月目。10月31日、ハロウィンの夜に。
私は、陶製の小さなジャック・オ・ランタンと。
まったく予想だにしていなかった志筑連の彼女という立場を手にしていた。

こうして。
生徒たちの悲喜交々なハロウィン・パーティは幕を閉じたのだった。

「Trick Or Treat?」&「HappyHalloween!!」



〜Fin〜



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