02. 志筑のお願い


「黒河」

気分良く、昼休みを過ごしていた私の平穏を壊す、声。

「・・・何?」

椅子に座って上目遣いに見上げる私の前には、志筑連がいる。

「放送。聞いてたか?場所、どこだって?」

「ん。聞いてた。4時から視聴覚室だって。」

おお?場所を聞いてくるって事は、ちゃんと出席する気があるんだ?
これはちょっと意外。立候補したとはいえ、きちんと仕事してくれるつもりがあったとは。

「そうか。・・・黒河、先行くなよ?」

「え゛。なんで?・・・別に一緒にいく必要、ないよ?」

あ゛。まずっ。ちょっとあからさまに嫌がりすぎたかしら。
なんとなく、志筑、不機嫌そう?

「話が、あんだよ。いいか、ちゃんとまってろよ。」

うぅ。あんたといるだけで何云われるかわかんないからさ。
なるべく一緒に行動したくないのよ。
できれば単独行動で各自自分の仕事をする、て云うんじゃ駄目かしらね。

しかし。そんな私の心境に志筑が気づくはずもなく。
いうことだけいったらさっさと教室を、でていった。

・・・・そろそろ昼休み、終わるのにどこいくんだろ・・・・・?サボり?

そして案の定、志筑は午後の授業には、出てこなかった。
これで成績は上位クラスだっていうんだから、世の中なんか間違っている。
―――――― 一抹の理不尽さを感じた瞬間、だった。



「なぁによぉ。志筑の奴、戻ってこないじゃない。」

むか。と。不機嫌にもなるよ。
4時まであと15分。そろそろ視聴覚室に向わないと会議に間に合わない。
それなのに志筑は一向に帰ってくる気配、なし。
由紀は用があるとかで先に帰っちゃったし・・・・。
教室に残ってるのは私以外にあと数人しかいない。

はぁ。10分前・・・・。もういいや。志筑なんて置いていってやる。

意を決して席を立つ。
教室を出ようと扉に手を掛け・・・・・あら?・・・引いていない戸が、何故か、開いた。

ん?視界が真っ黒?・・・・戸に掛けようとあげていた手が中途半端に残される。
あ。これ、男子の制服だわ。
私の視界を占めていたものの正体に思い至り、そのまま視線を上げると。

「志筑・・・・。」

そこにいたのは。ただ佇んでいるだけでもしなやかな身のこなし。雰囲気は、猛獣。
身長180cmを超える長身で160弱の私を見下ろす、志筑連の姿だった。

「そろそそ時間だろ。いくぞ。」

短く言い放ち、教室に入ることなく、踵を返す。

「ちょ・・・まってよ。志筑!」

私はあわてて志筑の背中を追いかける。

あ、あんた歩くの速いわよ、ちょっとは身長差を考えて気を使いなさいよね。
たくもう。ちぃっとも戻ってこなかったくせになんなのこの傍若無人さはぁ。

どうにか追いつき、志筑の横に並んだ私の息は、やや荒くなっていた。
まぁ、間に合いそうだからいいけどさ。これじゃ先が、思いやられる・・・。

軽く息を吸って、呼吸を整える。横にいる志筑がちらっと私に視線を向けてきた。

ん?なんか言いたそう?
あ。もともとこいつが待ってろって云ったのって、私に話しがあるからなんだよね。

「そういえば。志筑、なんか話があるんじゃなかったっけ?」

とりあえず私から話を振ってみる。

おお?志筑、ちょっといいよどんでる、かな?

「あー・・・・、あのさ。・・・・頼みが、あるんだけど。」

へ?私に?・・・志筑に頼まれるようなことなんて、全然思いついかないんだけど?

「んー、何?内容にもよるけど。・・・あ、でも実行委員の仕事、全部一人でやれとかは無しよ?」

「いや。その逆。ハロウィンまでの間、なるべくオレと一緒にいてくれないか?」

――――――は?・・・ええ!?どゆこと?

私がかなり驚愕の表情をしていたのか、志筑がやや顔を顰める。

「・・・・ハロウィン。面倒なんだよ、誘われんの。いちいち断る口実考えんのも面倒だし。実行委員してれば断る口実、できるだろ。一人になんなきゃ声掛けられる率も減るし。当日もそれまでも忙しいからな。」

ああ。確かに実行委員、忙しいらしいからねー。女の子たち、気を使って遠慮すると思う、けど。
・・・ふーん。これも、ちょっと意外。志筑、くるもの拒まずってタイプかと思ってた。

「・・・ん?でもこの場合、私が女の子たちに恨まれるんじゃ?」

意中の彼に、幾ら役職上とはいえ女が引っ付いてたら、必然的に恨みを買う、気がする。

「・・・・頼む。」

わ、私の被害は無視かい!ああ、もうどうしてこう次から次に厄介ごとが!
ハロウィンは私にとって鬼門だわ!

て。・・・あー、そんな真剣な顔で頼まれてもさ。・・・・ううぅ。


・・・・・・えぇい、もう面倒ついでよ!

「わかった。わかったよ。なるべく委員の仕事は志筑と一緒にやればいいのね。」

私が諸手をあげて投げやりに言葉をはく。

「さんきゅ」

――――――志筑。・・・・あんた、その笑顔は反則だわ。

はじめてみた志筑の笑顔に、私はかなり・・・・動揺、していた。



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