03. ハロウィンまでの幕開け


「ええ?なに、それ?」

私の前に座っているのは、由紀。
話しながらも、その手は、目の前にある揚げたてポテトへと伸びている。

「だからね。志筑、結構まじめにやってくれるつもりみたい。」

「いや、そこじゃなくて。立候補した以上、まじめにやるのなんて当たり前よ。私が云ってるのは理由。」

「ま。確かに不純な気がしないでも無いけど。でも、この時期の女の子たちは確かにちょっと鬼気迫る感じで怖くもあるからねぇ。」

志筑と一緒に会議にでた翌日。早速、私は由紀に昨日の志筑との顛末を語っていた。
場所は、やっぱり駅前のファーストフード店。

由紀の頼んだポテトに私が手を出す。
ここのポテト、美味しいのよね。
でも今月そろそろ財布がピンチ。なので、由紀の御相伴に与ることに。了解は得てないけど。

まぁ、でも。私がポテトを頬張っても由紀は気にする様子もないので、だいじょぶでしょ。

「だって。そんなことしたら、七夜が、女の子たちを敵に回すのよ?」

ああ。そうだよね。私もしっかりそう思ったんだけどさ。
でも。志筑があんまり真剣だったもんだから、ほだされたのよね。

「うぅ。・・・・やっぱ、そうだよね。・・・・でも、乗りかかった船、毒を食らわば皿まで!・・・・こうなったら、なんとか恨みを買わないようにしながら、ハロウィンまで乗り切ってみせる!」

ぎゅっと拳を握って力説する私。

あ。由紀が溜息ついてる・・・・。ああ。そんな呆れたような視線を向けるのは、やめて欲しい。

「考えなし。」

グサ。由紀がぼそっと呟いた一言に、流石に意気消沈する。

そりゃね。私もそう思ったよ?でも。ほっとけなかったんだもんさ。
ちゃんと、自分でまいた種は自分で刈り取るつもりだし。


「しょうがないな、もう。私もなるべく一緒に行動してあげる。私がいないときには海月クンが傍にいるようにしたげるから。」


へ?

由紀の意外な提案に、私が目を剥く。

めっずらしいぃ。由紀が私に協力してくれるなんて。
あ、や。こういうと、語弊があるか。

正確には、私が自分から引き受けた面倒ごとに手を貸してくれるのが、めずらしい。

その辺は、結構シビアなんだよね、由紀。

うーん、どぉゆう心境の変化かはわかんないけど、ここはとりあえず。


「ホントに!?うー、ありがと。ぜひ。お願い。」

にっこり笑って。協力を取り付けるのみよ。

ちゃんと自分で刈り取るつもりだけど、協力の申し出なら喜んで受けとかなくちゃ。・・・・由紀の協力は、後が怖いけど。


「・・・・・はー。」

あらら。そんな疲れた溜息つかなくても。
うーん。協力するのは不本意って感じだなぁ。
由紀のこの様子じゃ。
じゃ、なんでだろ?協力してくれるのかな??


由紀の表情を窺って見る。が。

あ。いつもの顔に戻ってるわ。


「とくかく。七夜、いい?志筑君とふたりきりになるような事態はなるべく回避するにこしたことはないんだからね。わかった?」

由紀が、びしっと私に人差し指を突きつけならが、有無を言わせぬ迫力で言質を求める。

ここは、素直に頷いとくべきだわ。うん。

こくこくと縦に首を振る私を、由紀が満足そうに眺め。
残ったポテトを掴むと自分の口に放り込んだ。


まだまだ前途多難っぽいけど。
でも、まあ。
これからハロウィンまでなんとかなりそうな気がしてきたし。

よぉし!これから気合入れてがんばろっ。


こうして、私のハロウィンまでの怒涛の日々は幕をあけることとなったのだった。



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