05. 志筑が向ける視線の、先 |
そして。それから更に二週間。 授業と準備に追われ、時々志筑が見せる笑顔にざわざわしながら。 私は毎日がバトルな日々だった。 が。幸いにして、志筑関連でその後女の子たちに絡まれることもなく。(いや、視線はばっちり痛かったけどね。) 志筑と二人きりになるような事態に陥ることも、この間一緒に帰ってからはないし。 このまま何事もなくハロウィンまで過ぎて欲しい。 切実に願っていた私であるが、やはり事態はそう上手く動いていくものではないらしい。 昼休み。由紀は会議ということで、私は教室でぼーっとしていた。 何も用事がない昼休みは久しぶりだぁ。 ほけ。と、していた私の前にでっかい男の影が被さる。 ぱっと顔を上げると、そこには志筑。 じっと私を見下ろしながら、軽く机の上に手をついてくる。 「黒河。土曜、暇?」 う? 「んー、たぶん」 「じゃ。不足材料の買出しな。13:00に駅前集合。」 へ?・・・て、・・・決定ですかい・・・。 こういうところは、ほんっとに傍若無人、なんだよね。 「後、誰が行くの?」 「オレ。」 うん。・・・・で?その次は?・・・まさか、二人だけじゃないでしょう。 が。次の名前が志筑の口からあがる事は無く。 「え゛、志筑と私だけ!?」 「そう。」 と、当然のように頷くなぁ! 「だって、結構な荷物よ?買出し。」 「だな。だから何組かにわかれる。各組毎に買ってくるもの決めて分散すりゃ、そうでもない。全員でぞろぞろ歩くより、効率いいだろ?」 ああ。なるほど。で、私は志筑と組みなわけね。 むーん。やっぱこういう采配は上手いわ。志筑。 普段は一匹狼的だけど、なんとなく人を使うのに慣れている感じが、する。 はっ。じゃ、なくて!まずい、まずいわ。 志筑と二人・・・・。また由紀に小言を言われること必至じゃない。 「あのさ。私ら以外の組み合わせは?」 「・・・・誰かに組み合わせ代わってもらおうとかは、無謀だと思うぞ?他の組は皆、デートのついでに買い物だとさ。」 ありゃ。考えてることばれてるわ。 というか。やっぱり志筑と二人きりにならないようにしてるってのもばれてたのか。 まぁ。常に由紀が副委員長が一緒に行動するようにしてれば、その辺の意図もわかってきちゃうよね。 「志筑、気にしてる?」 流石に。申し訳ない。やっぱり二人きりにならないようにしているのって志筑を警戒しているみたいだよね。実際は志筑狙いの女の子対策なんだけど。 それに。一ヶ月以上、志筑と行動を共にして。 志筑は結構、いい奴だ。 ランキングのことや、普段あんまり笑ったり、馬鹿騒ぎをするタイプじゃないから倦厭されがちだが、実際に話したり仕事を一緒にしたりすれば、わかってくる。 「いーや。気にしてしてない。だけど、今回キャンセルされたら気にするかもな。」 志筑がいたずらっぽく、笑う。 いや。そんな顔で笑われるとさ。あー、ざわざわする。 ・・・今回は、しょうがないよね。 「うー、了解。駅前、13:00ね。はー、催し物と模擬店の準備もなんとかなりそうだし。後、二週間かぁ。なんかもう、怒涛の如く日が過ぎてく。」 準備、準備に追われて、さすがにぼやきもでてくるってもんだし。 私の様子を見ながら、まだ志筑が僅かに笑ってる。 「あっという間だな、二週間なんて。」 「そだねぇ。・・・あ、由紀だ。」 教室の廊下側にある窓から、由紀の姿が見えた。 私の言葉に、志筑がそちら側に首を巡らす。 軽快に廊下を歩いて、教室の扉を開ける、由紀。 ん?・・・・あれ。・・・なんだろ。志筑・・・様子、が? 私の位置からだとよく表情が見えないけど、じっと由紀を・・・見てる? 由紀のほうは、気づいて無い、みたいだけど・・・・。 んん? 私の頭に、一つの考えが、閃く。 え・・・ええ!志筑・・・・もしかして。 由紀のことが、好き、なのぉ! そういえば。こないだ二人で一緒に帰った時。由紀が帰ったかどうか聞いてたっけ。 「し、志筑?」 私の呼びかけに、志筑が視線を戻す。 「あ?」 「ええっと。・・・・なんでも、ない。」 「なんだ、そりゃ。」 いつもと変わらずに志筑が唇の端を持ち上げ、静かに笑ってる。 ――――あれ? なんだか。つきんっと・・・・胸が、痛んだ・・・・。 |
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