02. クリスマス・イブ・・・は? |
あー、クリスマスかぁ・・・・。 なんだか着々と迫ってきてる感じがする。 もう12月なんだよね。 由紀に助言を貰ってから(あれを助言というならだけど)、数日。 既に日付は12月に突入していた。 そして、現在。昼休み中。 天気がいいので屋上でお昼を食べようと私は志筑を引っ張ってきて。 ほかほかと陽に当たる場所を確保した後、むぐむぐとお弁当を味わっていた。 今までは由紀と食べてたんだけど、志筑と付き合いだした時に、志筑と食べなと由紀に押し切られた為、私は自分の分と志筑の分、二人前のお弁当を作ることが既に習慣となっている。 だって、志筑ってばいつも出来合いのお弁当とか。パンとかだったんだもん。 成長期に(これ以上志筑が成長するのかは謎だけど)、やっぱり栄養が偏るのは良くないし。料理自体はそんなに嫌いじゃないし。 ま、志筑も文句言わずに食べてるってことは、まずくはないんでしょう。 等など。ぼーと考えながらお弁当を食べていると、私より先に食べ終わった志筑が、不意に話しかけてきた。 「七夜、ちょっと確認しときたいんだが。」 「んん?」 「お前、まさか・・・叶の手伝いなんて、引き受けてないだろうな?」 「へ?えーと。クリスマスの?・・・・うわ。まさか。引き受けるわけないってば。もう、ハロウィンの時、大変だったもん。」 「そうか。」 やや安堵したような志筑の様子。 うーん、流石に一ヶ月間も一緒にいると大分志筑の表情が読めるようになってきてるなー、私。 志筑、やっぱりクリスマスイベント、気にしてるのかなぁ? まあ、でも。実はクリスマスイベントの役員は、ハロウィンの役員よりかなり楽らしい。 どうも、ハロウィンで出来上がったカップルたちにとって最初のクリスマスは二人で過ごしたいだろうという学校行事らしからぬ配慮で、かなり簡略化したイベント内容になるらしいのだ。 その為、いまだに実行委員さえ選出されていない。 それに比べて、ハロウィンのときは・・・過酷だった・・・。 おまけに自分の恋愛ごとまで絡んできて。もうぐちゃぐちゃ。 思わずしみじみと感慨に耽ってしまう。 は。いかんいかん。また自分の考えに没頭するとこだった。 それよりも、今日は志筑に確認しとくことがあるのよ。 「ね。志筑、クリスマス・・・どうする?」 海外では、家族と過ごすものだっていうけど。 一応、日本にいて恋人同士となったら、やっぱり一緒に過ごすべき、かなと。 ちょっと緊張しながら志筑の返事を待つ私。 やや考え込んでいた志筑が、ちらりと私の方に視線だけ向けてきた。 「うち、くるか?イブに。泊まりで。」 「・・・・・へ?」 しばらく。云われた意味を掴めずに私はかなり間抜けな顔で志筑を凝視していたと、思う。 そして、やっと意味を理解する段階になった途端、一気に頭が沸騰した。 「・・・・ええ、と。・・・・・冗談?」 「いや?至極真面目。」 「・・・・ご家族は・・・?」 「単身赴任の親父について、おふくろもそっちにいってるから実質一人暮らし。」 「―――――――。」 思わず、絶句する。 そ・・・・それって。つまり。・・・・つまり、そうゆうこと、よね? え、ええぇぇ!? 私は完璧に狂騒状態に陥っていた。 だ、だって、そんな急な。志筑ももうちょっと回りくどくいってくれれば心の準備もできたのに! 志筑の視線を浴びながら、口をパクパクさせる。 そんな私の様子をしばらく眺めた後、志筑が軽く溜息をついた。 「嘘。・・・七夜、どっか行きたいとこあるか?」 あきらめたような笑いを滲ませ、志筑の手が私の頬に触れてくる。 ひんやりした手の感触が、気持ち良かった。 私は、志筑が引いてくれたことにかなり安堵している。 でも。何故か心の中がもやっとしてきて・・・。 これで、いいのかな・・・・。私、志筑のこと、スキなのに。 ―――志筑は、いつも私を混乱させる。 今日だけじゃなく。この頃はいつもこんな風に仕掛けてきて、でも私が動揺してるといつの間にか、引いてくれてて。 ふと、由紀の言葉が思い出された。 ―――成り行きが嫌なら、自分でしっかり覚悟を決めとくことね。 私の場合。こういうイベントでもないと、絶対に覚悟なんて決められない気がする。 そうよ。今、決めておけば、少なくともクリスマスまでの間に心の準備はできるかも。 「七夜?」 黙り込んでしまった私に、志筑が不思議そうに声を掛けてきた。 よおし、覚悟の決め時よね! 私の頬に触れていた志筑の手をがしっと掴む。 そして、私は志筑に向けて何故か喧嘩腰な勢いで言い放っていた。 「志筑ん家!私、志筑の家に行きたい!」 この時の、めったに見れない志筑の呆然とした表情を眺めながら、私はしてやったり、と思っていたり、した。 でも、この場合の準備って・・・・何をするもんなんだろう・・・・。 |
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